Voice of a graduate奨学生の声
— 拝啓、せんぱい【学生編】 —
赤尾育英奨学会の現役奨学生に、大学生活や将来の夢についてお聞きしました(内容は2024年6月インタビュー時のものです)。
- 【令和5年度 奨学生】写真左から
- 菱山那柚さん(山梨県立大学 看護学部 看護学科2年)
- 坂本文芽さん(山梨大学 工学部 応用化学科2年)
- 山本鳳駿さん(身延山大学 仏教学部 仏教学科日蓮学専攻2年)
―本日は、県内の大学に通う大学2年生の皆さんにお集まりいただきました。
まずは、大学へ進学した理由から教えてください。
坂本さん:私は小学4年から高校3年までカヌー競技に打ち込み、高校3年最後の全国大会決勝で入賞することができました。カヌー中心の生活をずっと続けていましたが、将来について考えた時に、数学や化学が得意でカヌーの道具に興味があったことから、工学部がある地元の大学へ行きたいと思い、山梨大学へ進学しました。カヌーの道具は輸入品が多く、外国人の体型に合わせて作られたものばかりです。日本人の体型に合った道具があれば、もっと日本人が活躍できると思っています。
山本さん:父親の職業がカウンセラーで東洋思想をベースにしていたため、自然と自分も興味を持つようになり、東洋思想に関する本をよく読んでいました。高校は仏教コースがある身延山高校へ通いました。部活は情報技術部に入り、高校3年間で情報処理技能検定表計算1級や文章デザイン検定1級など複数の検定の上位級を取得しました。また、創作同好会にも所属し、読売新聞主催の『十人十色賞』で短編部門入賞、山梨文学賞青少年部門で青春賞を受賞しました。仏教を学問として学び、仏教の道を究めたいと思い、身延山高校から身延山大学へ進学しました。
菱山さん:高校は陸上競技部に所属し、総合女子の部で県大会5連覇を達成しました。また個人種目で関東大会出場も果たすことができました。勉強と部活の両立は大変でしたが、逃げずに努力を続け、看護師と保健師の2つの資格取得が目指せる第一志望の山梨県立大学に入学することができました。保健師を目指すきっかけとなったのは、中学の時に父親が病気で倒れて入院をしたことです。元気に暮らしていた家族が、突然、明日死んでしまうかもしれないという状況に直面し、「病気になる前に何かできたのでは…」と真剣に考えました。普段から規則正しい生活をして、未然に病気を防ぐことが大事だと思い、保健師は病院での看護だけでなく、人々の日常に近いところから生活を見守る仕事ということを知り、自分が目指したいのはこれだと思いました。
―実際に通ってわかった、大学のアピールポイントを教えてください。
坂本さん:他大学の工学部は男子学生が多いですが、山梨大学の私の学年の工学部は珍しく男女の比率がほぼ同じです。工学部なので1、2年は数学や化学の講義が多く、3年からより実践的な実験や研究に取り組むことができますが、1年の時から専攻とは違う授業をとることもでき、私は以前から興味のあった陶芸のクラスをとりました。
それと桜の季節は、甲府駅から武田神社へ続く武田通り沿いの桜並木がとても綺麗です。春の入学シーズンは桜が舞う景色を見ながら自転車で通学するのが最高です!
山本さん:身延山大学は高校と同様に日蓮宗総本山である身延山久遠寺の隣にあり、真剣に学ぶ環境が整っているので、仏教に興味のある人にはおすすめです。学ぶ目的がないと厳しいですが、明確な目的がある人には、仏教を学問として学んだり僧侶の経験を積むには、理想的な場所だと思います。
菱山さん:山梨県立大学は県立大なので山梨県との繋がりがあります。看護学部では、地域の保健医療施設に訪問し、職員の方に話を聞くこともあります。実際に経験することで、知識や思考力を高めることに直結し、身に付くスピードが速く、記憶にも残りやすいです。自分が住んでいる地域で、これまで出会えなかった人や新しい景色が見えることもあります。
―将来の夢のために、大学ではどんなことを学んでいますか?
坂本さん:化学の基礎から学んでいますが、知らないことや理解しきれていないことがまだまだあります。第二外国語はドイツ語を履修しています。ドイツにはカヌーの強豪国で有名なメーカーもあり、最先端の競技道具の情報を得るためです。将来どんな職業に就きたいかまだはっきり決まっていませんが、人の役に立っていると実感できる仕事がしたいと思っています。3年から始まるゼミで、いま学んでいることが具体的に何に役立つのか教えてくれるので、しっかり学んでいきたいです。
山本さん:法要に関する知識や作法はもちろん、僧侶としての心構えや教学など、僧侶として持つべきスキルを磨いています。また、カウンセリングや心理学などの基礎を学び、宗教とメンタルヘルスの関連性について興味を持ちました。日蓮上人の教えを学んでいくと同時に、現代社会において自分は何ができるのか、これから考えていきたいです。語学でいうと、私はサンスクリット語と韓国語を勉強しています。サンスクリット語は仏教を学ぶ上で必要な言語で、韓国語は隣国の文化を知るために選びました。
菱山さん:看護に必要な知識を座学で勉強しながら、注射や体の洗浄などの看護技術も勉強しています。1年の病院実習では、看護師の動きを見て学んだり、患者様とお話をしました。2年の秋から、1人の患者様を担当し、自分で看護計画を立てて実行し、記録にまとめるといった臨床の場を意識した勉強になります。
そして3年から保健師課程が始まりますが、定員があるのでまずは選考をクリアすることが目標です。将来は保健師を目指しつつ、地域の保健医療に貢献したいと思っています。医療現場で当たり前の知識を一般家庭でも広めていきたいという思いがあり、ひとりひとりの心がけで病気になる人を減らせるのではと考えています。
坂本さんと山本さんは外国語を学んでいますが、私が医療現場で興味があるのが、手話です。病院実習で訪問した老人施設にろう者の方がいて、耳の聞こえない人同士でも手話で会話が弾んでいたのがとても印象的でした。その時に私も少しだけ手話を教わり、看護に必要だと感じました。
―学業以外に、大学に進学して良かったと思うことはありますか?
坂本さん:高校は部活一筋でしたが、大学に進学して視野が広がり色々なことが考えられるようになりました。家族と話す機会が増えて家族について考えたり、尊敬できる友達ができて、良いところを参考にして人間性を深めることができたと思います。
山本さん:身延山大学は少人数制のため、先輩も後輩もみんな顔見知りで孤独になることはありません。社会人を経験して転入学する人もいるので、異なるバックボーンの人の話を聞いて、自分に足りない経験を補うことができました。
菱山さん:全国の数ある大学のなかで同じ大学に進んだ者同士、気の合う友達が増えました。同級生の看護の友達は一緒にいて安心します。私は高校までずっと手書きで勉強していたため、パソコンが苦手でしたが、大学はパソコンを使った資料作成が多く、周りに教えてもらいました。保健師の仕事は統計データを扱うことが多いので、今のうちに慣れておく必要があります。
―平日の授業以外の時間や休日はどのように過ごしていますか?
坂本さん:平日は朝起きたら、自分と高校に通う弟のお弁当を作るのが日課で、授業が午後の日はコンビニでアルバイトをしてから大学に行きます。休日は午前中にアルバイト、午後は大学の課題や趣味のお菓子作りをしています。
最近はレーズン入りのパウンドケーキを作って家族に好評でした。アニメや漫画も好きなので、よく弟や妹と話しています。カヌーに関しては、現在は選手としてではなく、大会の運営に携わっています。2級小型船舶免許を取得して、モーターボートに乗って大会の航路の確認などしています。
山本さん:授業の有無にかかわらず、毎朝6時に起床します。通学は片道1時間半かかるので、仏教書などの本を読んだり、小説を書いたりしています。空きコマの時間は、基本ひとりで勉強をしています。学生自治会に所属していて、高校の情報技術部で習得したプログラミングのスキルを活かし、学生寮のHP制作もしました。
菱山さん:空きコマの時間にサークル活動をしています。2つのアカペラグループに所属し、それぞれ週1回練習があります。同じ学年の看護学部の女性グループと、もう1つは学年も学部も違うグループです。アカペラはみんなで歌ってハーモニーをつくるのが心地よく、看護の勉強で心理的に重たいと感じる時も、息抜きになります。
校内発表だけでなく、甲州市の福祉祭りや「甲州アカペラサミット」という全国のアカペラグループが集まるイベントにも参加しました。土日はカフェでアルバイトをしています。接客は大変ですが、社会勉強として看護にも繋がると思っています。
―それでは最後に、奨学金制度を検討している高校生へメッセージをお願いします!
坂本さん:大学で必要な教科書をすべて自分で購入するのは大変ですが、奨学金を教科書代に充てることで、勉強時間を削ってアルバイトをする必要がなくなりました。大学生になると自由な時間が増えるとよく言われますが、それでも1日は24時間です。自分の好きなこと、やりたいことを明確にすると、忙しくて大変なだけでなく充実した大学生活を送ることができます。進路で悩むことがあっても、「自分が好きだから選んだ」という揺るがない価値観があれば、後悔はしないと思います。
山本さん:私は奨学金の給付を受けて、お金のことをあまり考えなくてよくなったので、精神的に楽になりました。自分を評価してくれた喜びと同時に、「奨学金をもらうからには、しっかりやらなくては!」と気が引き締まりました。高校生の皆さんに伝えたいことは、誰もが大学に行く風潮がある中で、4年間という時間を費やして、そこで本当に学びたいことがあるのか、覚悟を持ってしっかり考えることも大事だということです。
菱山さん:私は家庭の事情で大学に進学するか悩みましたが、赤尾育英奨学会に経済面で支えていただき、感謝しています。いつか社会で働いて還元したいという新しい目標もできました。奨学金のおかげで、やってみたいことを我慢せずにできることがとても有難いです。大学に入ると、沢山の出会いがあり、自分の可能性が広がります。楽しいことだけでなく思っていたのと違ったということも、すべてが自分にとって良い経験になり役に立つはずです。大学進学を考えている高校生の皆さんには、不安なことばかり考えるのではなく、「未来は明るい!」と信じて受験勉強を頑張ってほしいです。