Voice of a graduate奨学生の声
— 拝啓、せんぱい —
自分らしく輝ける道を見つけるため、失敗を恐れず様々なことに挑戦した大学時代を過ごし、現在、甲府市立笛南中学校で英語科教諭となった小林真波さんにお話を伺いました(内容は、2023年1月のインタビュー当時のものです)。
英語教師を目指すきっかけ
となった先生との出会い
―大学の授業で、特に印象に残っている講義は何ですか?
私が通っていた山梨英和大学には、「サイコロジカル・サービス」、「グローバル・スタディーズ」、「メディア・サイエンス」の3つの学びの領域があり、自分の興味・やりたいことが見つかりやすいのが特長です。私は、教育、英米文学、国際交流やジェンダー論に関心があり、日々の講義で深い学びを習得できるよう全力で取り組みました。
特に、私が英語教師を目指すきっかけとなった恩師の“Presentation in English”という授業がとても面白かったです。SDGsの中からテーマを選び、スライドを準備して英語でプレゼンテーションを行いました。もうひとつ、「英米文学史」の授業も印象に残っています。
この授業を通してアメリカ文学に興味を持ち、卒業論文では『若草物語』と『トム・ソーヤーの冒険』の中で書かれている19世紀アメリカの教育観について研究しました。専門ゼミでは、日本の英語教育の変遷を研究し、なかでも英語教師としての経歴をもつ夏目漱石に刺激を受けました。
―英語教師を目指そうと思ったきっかけは?
講義のところでもお話しした恩師との出会いがすべてです。もともと英語や子どもに関心がありましたが、先生の授業はとても楽しく、さらに深い愛情で包み込んでくれるような憧れの存在でした。山梨市立図書館で小学生に英語の絵本の読み聞かせをするボランティア講師を、一緒にさせていただいたこともきっかけになりました。
―教育実習ではどんな思い出がありますか?
教育実習は、私の母校の中学校へ行きました。給食で余ったデザートを誰が食べるかジャンケンで決めるのですが、その時の子供たちの真剣な表情は忘れられません。また、教育実習の最終日に一人の女子生徒から、「教員採用試験に落ちてね」と涙ながらに言われたこともありました。
その生徒は、「教員に採用されなければ、また戻って来る」と勘違いしていたのです。「戻ってきてほしい」という素直な気持ちが伝わって嬉しかったですね。教育実習は準備を含めて大変でしたが、多くのことを学びました。
失敗を恐れず、“Nice try!”の
気持ちで様々なことに挑戦
―地元で外国人観光客向けのプロジェクトに参加されたそうですが、どのようなことをしましたか?
大学1年の時に「カタコト英語プロジェクト」という、山梨県を訪れた外国人観光客が飲食店などで言語の壁に苦しまず、快適に過ごせるようにすることを目的とした活動に参加しました。
駅周辺の飲食店に対して、英語のメニューや看板があるかどうか、支払い方法などのコミュニケーションはどうしているかなどの実態調査を行いました。そして必要に応じて、自分たちで作った英語表記のメニューや英語での対応方法を書いた一覧を配布したりしました。
―その他にも、海外研修など様々なことに挑戦したそうですね。
視野を広げるために、大学の学業以外にも積極的に参加しました。その中でも2020年2月にシンガポールで開催された「アジアの若い女性のためのリーダーシップ研修2020」は、人生の中でもとても貴重な経験となりました。
応募にあたっては、英語でのエントリーシートや解決したい社会問題などのエッセイ提出に加えて英語面接もあり、ハードルは高かったのですが、諦めずに取り組みました。
事前研修を受けたアジア10ヵ国から同年代の参加者が集まり、様々な国のメンバーと一緒に濃い1週間を過ごしました。同じアジア圏の方々でも圧倒的な表現力があり、伝えたいという強い気持ちを感じるとともに、失敗しても“Nice Try!”といって失敗に寛容で、挑戦すること自体に価値を見出すことを学びました。
また、友達からの薦めでミス・ユニバースにも応募しました。社会人の方も多く、乳がんの啓発活動や入院中の子供たちへの募金呼びかけなどを行いました。個性や意思を尊重すること、どんなことであっても自分が自信を持てること、輝けるものを知ることの大切さを学ぶ機会になりました。
―学業と学外活動の両立はどのようにされていましたか?
自らの興味を追求していたので、全く苦ではありませんでした。「知らないことを知りたい!」という好奇心の強さからか、世界の多くの事柄を知ることも「学び(=学業)」だと思っていましたので、むしろ楽しめました。
夢を叶え、オープンマインドで
楽しく英語の授業!
―実際に先生になってわかった苦労はありますか?
自分が当たり前のように思っていたことでも、生徒から「なんで?」「どうすればいい?」と聞かれることがあり、その都度、子どもたちの視点から再考し、私自身が固定観念に縛られていないかを見直します。その上で、生徒に目的や理由を伝え、最終的には生徒が自らの意思で行動できるようにすることを大切にしています。
―生徒と接する時や、英語を教える時に心がけていることはありますか?
自分自身が“オープンマインド”でいることです。ある時から、自分が明るく授業すると、生徒も元気になることに気づき、生徒が心を開いて前向きに学べるように意識しています。
また、単に文字だけを追うのではなく、その背景にある文化や宗教などの異文化理解を深める授業を心がけています。それとともに、英語の力をつけるために4技能(読む・書く・聞く・話す)の基礎をしっかり学べるようにしています。
―どのような時にやりがいを感じますか?また今後の目標についてもお聞かせください。
生徒ができなかったことが、できるようになった時にやりがいを感じます。落ち着きや集中力がなかったクラスの雰囲気が、ある時期から全員が集中し、一生懸命に目の前の課題に取り組むようになった姿を見た時は、嬉しかったですね。生徒たちに教えられることもたくさんあって、一緒に勉強しています。
今後は、英語の指導力をもっと高めて、さらに学級経営も向上させていきたいです。
奨学金のおかげで、学外活動にも
積極的に参加でき視野が広がった
―赤尾育英奨学会の給付を受けて良かったことを教えてください。
本来ならアルバイトばかりの生活で時間的・精神的な余裕をもてなかったところを、経済面のご支援をいただいたことで、学業を深め、学外活動にも挑戦することができ、人生がより豊かになりました。そして、この感謝があるからこそ、少しでも山梨県に貢献して恩返しをしたいという気持ちが芽生えました。
―最後に、奨学金制度を検討している学生へメッセージをお願いします。
気になることや、やってみたいことがあれば、躊躇せずに飛び込む勇気を持つこと。海外研修で、“Nice Try!”と声をかけてもらったように、失敗を恐れずに挑戦してほしいです。
私は本奨学会からご支援いただいたことにより、新たなチャンスや将来への希望を得られました。本当にしたいことに出会うまで苦悩するかもしれませんが、様々な実体験を通して自分自身や世界のことを知り、自分らしく輝ける道を見つけられることを願っています。応援しています!