Voice of a graduate奨学生の声
— 拝啓、せんぱい —
山梨県内におけるソフト開発業界のメーカーでシステムエンジニアとして働く、粟澤和紀さんにお話を伺いました(内容は、2019年9月のインタビュー当時のものです)。
数学の面白さにのめり込む高校時代
―小さい頃から数字が好きだったそうですね。
はい。物心ついた頃から、国語などの教科よりも算数が好きでした。国語は正解がひとつではないこともありますが、算数は正解がひとつなので解けた時に気持ちがすっきりします。
囲碁も好きで、小学校の頃にテレビアニメを見たことがきっかけで始めました。地元の大会にも出場し、準優勝をしたこともあります。囲碁は年齢・性別を問わず対等な立場で勝負でき、同じ一局はひとつとしてないことが一番の面白さだと思います。
高校では理系を選択し、数学だけでなく物理や化学などの理科分野も学びました。特に物理は多くの場面で数学と密接に関係していることを知り、数学に対する興味がより強くなりました。大学は、コンピュータ関連の技能がこれまで以上に重要になると考えて、山梨大学工学部コンピュータ・メディア工学科に進学することを決めました。
プログラミングの初歩から学び、
卒業研究では
「自然言語処理」をテーマに
―念願の山梨大学工学部に進学し、いかがでしたか?
入学当初は初めてのことに戸惑ったり、驚いたりの毎日でした。パソコンを使う授業が多く、うまくいかずに何時間も試行錯誤していると、いつの間にか夜になるということもありました。プログラミングの初歩から学び、最初はついていけるか心配でしたが、不思議なことに少しずつ慣れていきました。授業だけでなく、そのあとの自学がとても重要で、語学と同じように毎日使っていくことで染み込むように身についていきました。
―大学の授業で印象に残っている講義や実習はありましたか?
2年生になると、大学の講義が格段に難しくなり、より専門的な内容になりました。プログラミングの実習ではメール送信ソフトを作り、3年生になってようやく完成しました。
黒い画面に文字を入力する作業がしばらく続き、最後の最後に、普段よく見るようなメール送信画面が出てきた時は達成感がありました。さらに、自分の携帯電話にメールが無事送られた時の感動は忘れられません。
―コンピュータ関連以外で、面白かった授業はありますか?
山梨大学の授業は、後半になるとより専門的な内容になりましたが、前半は共通教育科目が多くありました。当時、「山梨学」という授業があり、1年生の時に受講し、ワインや果物、宝飾など県の産業の工場や会社を訪問してレポートにまとめました。特に印象に残っているのはワイナリー訪問で、私は県の出身ですが、ワインの貯蔵庫を訪問する機会がなかったので貴重な体験でした。自分の県について知らなかったことを、「山梨学」の授業を通じてより深く知り、地元の良さを再発見しました。
―卒業研究は、どのようなことをしましたか?
私が4年生だった2013年くらいからアップルの「Siri」という音声アシスタントが出始め、その中身がどうなっているのか気になったことから、人間の話す言葉を機械で処理する「自然言語処理」を研究する研究室に入りました。
スマートフォンの場合、主に「音声」と「言語処理」の2つの分野に分かれます。私はどちらかというと解析に興味があったので、後者を卒業研究のテーマに選びましたが、日本語は他の言語に比べて難しいと聞いていた通り、とても苦労しました。
英語はアルファベットの文字が26種類しかありませんが、日本語はひらがなとカタカナの時点で既にアルファベットの文字数を超え、漢字まで含めると無数になります。意味を解析する以前に、文字解析や文脈解析が上手くいかない状態がしばらく続きましたが、関連する論文を読みあさり、そこからヒントを得てなんとかできました。
―就職活動は、山梨県内に拠点を置く情報系企業を探したそうですね。県外ではなく山梨で働きたいという想いなどありましたら、お聞かせください。
私はずっと山梨に育ててもらったようなものなので、可能ならば山梨で働きたいという想いがありました。県内には魅力的な会社がいくつもあり、「自分は何に貢献できるのか」、「何のために働くのか」と考えながら、大学の就職セミナーなどで情報収集をしていくうちに、地域と企業の発展、情報技術の繁栄に貢献したいという気持ちになりました。
山梨の企業だからこそ、
出身大学と仕事で繋がることも
―YSKは、県内におけるソフト開発業界のメーカーとお聞きしています。入社の決め手を教えていただけますか。
就活生として初めてここを訪れた時、きれいでかっこいいIT企業のオフィスという印象を受け、自分がここで心地よく働いているイメージができました。プログラミングをやっていると理詰めで考えることが多いのですが、私は直感も大切にしています。お客様も心地のよいオフィスだと感じてくれれば、それだけで商談が気持ちよく進められるのではと思います。
YSKは県内でも人気のある企業という位置づけで、新入社員は毎年10人くらいずつ入っています。社員は現在約230名で、山梨に3拠点、東京と福岡に1拠点ずつあります。社員数が多く、話をする機会がない社員もいるため、運動会や球技大会、七夕まつり、ハロウィンなどの社内イベントが開催され、積極的にコミュニケーションをとっています。最初はインドアな人が多い会社だと思っていましたが、実際は運動が大好きなアクティブな人が多く、バドミントンやテニスは実業団の大会で上位に入るレベルの社員もいます。
―現在はどのようなお仕事をされていますか?
開発メンバーと打合せをすることもありますが、私はプログラミングが得意なので、1日中プログラミングをしている日もあります。また、山梨大学と開発している案件もあり、大学に訪問して先生方に意見を伺うこともあります。山梨県の企業だからこそ、出身校の山梨大学と仕事で繋がることもあり、嬉しく思います。
YSKでは「お客様本位」という言葉をよく使いますが、お客様が何を求めているのかを常に意識し、お客様に使ってもらえるシステムの開発を心がけています。困っている本質を突き詰めれば、それが結果的に問題解決に繋がって、良いシステムの納品になると考えています。苦労することもたくさんありますが、「システムを導入してよかった」とお客様に言っていただけると作った甲斐があります。
―お仕事において、今後の夢や目標があれば教えてください。
大学を出たら勉強は終わりではなく、社会人になっても勉強を続けることが大切です。YSKは、社員の技術力アップや資格取得サポートなどの社内制度が充実していて、私もこの制度を利用して資格を取得しました。この職場は、熱心に勉強をしている人が何人もいて、とても良い刺激になります。
私がちょうど今、開発をしているのが、ここ数年で話題になっている人工知能(AI)です。この分野に携わりたいなと思っていたところ、担当することになり、山梨大学で機械学習の研究をしている教授に話を聞いたりして進めています。今後も開発を続け、人工知能(AI)による「業務改革」をもたらすことが、今後の夢です。
大学でやりたいこと、
学びたい分野を伸ばすために、
奨学金が助けに
―最後に、奨学金制度を検討している学生へメッセージをお願いします。
私は、奨学金のおかげで授業料の不安が解消されて、勉強に時間を傾けることができました。入学当初はコンピュータの知識がほとんどなかったため、復習をしないと授業に追いつかず、必死に勉強しました。アルバイトをする時間が取れない私にとって、奨学金はとても助かりました。
大学でやりたいこと、学びたい分野を伸ばすために、奨学金は確実に助けになるはずです。大学に行っているのにアルバイトをずっとやらなければならないという状況であれば、一度、奨学金について考えてもいいのではと思います。必ず、チャンスはあるはずです。
文/写真:真壁在