Voice of a graduate奨学生の声

— 拝啓、せんぱい —

拝啓、せんぱい #3 依頼者に寄り添い、ひとつひとつの案件に心を込める弁護士 中川佳治さん(あおば法律事務所 弁護士)

2012年に山梨学院大学法科大学院を卒業し、初めて挑んだ司法試験に合格。現在は、甲府市に法律事務所をかまえる弁護士の中川佳治さんにお話を伺いました(内容は、2018年7月のインタビュー当時のものです)。

身近に起きた法律問題がきっかけで、弁護士を目指す

―弁護士になりたいと思ったきっかけを教えていただけますか?

高校生の頃、身内で法律問題が起き、その問題を解決してくれたのが弁護士でした。自分も、同じような悩みを抱えた人たちを助けたいと思い、弁護士を目指すようになりました。当時は山梨県立甲府南高等学校に通い、理系コースを専攻していましたが、弁護士を目指すために文系コースに変更しました。

必死に勉強し、難度の高い司法試験にストレート合格

―7年間、山梨学院大学で勉強に励んだそうですが、どのような学生生活を過ごしていましたか?

中川佳治さん

学部生の4年間は、司法研究室に所属し、研究室にこもって勉強していました。成績はトップクラスでしたが、特待生として進学した山梨学院大学法科大学院(ロースクール)では他大学の学生も合流し、レベルの差を感じました。

「このままではまずい」と思い、必死に勉強をしてロースクールの中でもなんとか上位に入ることができました。学部生の頃は時間的にゆとりのある生活を送っていましたが、ロースクールの3年間は、1日15時間くらい勉強をしていました。

―司法試験に合格した秘訣は何だと思いますか?

合格の秘訣は、「効率」を徹底的に考えたことだと思っています。法律を突き詰めていくと、際限なく研究でき、こだわりも出てきます。どんな試験対策にも言えることですが、試験に関係のない分野を勉強しても試験には受かりません。過去問を徹底的に問いて、出題の意図に繋がる重要な部分を見極め、その視点で法律を勉強すれば、最短ルートで合格できるのではないかと考え、その通りにやりました。

―勉強以外にも力を入れていたことはありますか?

弓道

高校生の時からずっと弓道を続けており、学部生の時も弓道部に所属していました。大学1年の時には全関東学生選手権に出場し、武道の聖地・日本武道館で弓を引きました。

大学時代は1年の時から司法研究室に所属し、あまり練習に参加できなかったのですが、そんな自分を弓道部の仲間が温かく迎えてくれたことが嬉しかったです。辛い試験勉強も、弓道部の仲間との楽しい思い出があったからこそ乗り越えられたと思います。

ロースクール時代は、司法試験を受ける人たちしかいないので、みんなで休暇の日を決めて、それまでは勉強を一生懸命頑張り、休暇の日になったらみんなで釣りへ行ったりして息抜きをしていました。

―司法試験終了から合格発表までの間は、どのように過ごされましたか?

社会人になったらできないことをしたいと思い、北日本の海岸線沿いを自分の車で5日間くらいかけて巡りました。東日本大震災から少し経っていた頃だったので、震災後の様子を自分の目で見てみたいという想いもありました。合格発表前だったので、ソワソワしながら旅行をしていた記憶があります。

自分の可能性を信じ、独立の道へ

―弁護士というお仕事の魅力は何ですか?

中川佳治さん

法的トラブルを抱えている方々を救う手助けができることです。無事に案件が解決し、依頼者から「ありがとう」と感謝の言葉をいただく瞬間にやりがいを感じます。

また、仕事とは別に、山梨県弁護士会での活動として社会貢献活動にも携わっていますが、弁護士であることで信頼され、初対面の方でも私の話に真剣に耳を傾けてくれます。それは、弁護士は社会的責任を伴うということであり、責任の重みに気づかされました。

弁護士というと、法廷で戦っているイメージがありましたが、実際に仕事をしていると、法廷に立つ前に問題が解決することもよくあります。裁判をするだけが弁護士の仕事ではありません。裁判になると白黒つけようという気持ちが強くなりがちですが、そうなる前に未然に争いを防ぎ、本人たちの負担を減らすことも弁護士の大切な仕事だと思っています。

―「あおば法律事務」を設立して独立されましたが、お仕事に変化はありましたか?

いずれは自分の事務所を持ちたいという想いがあり、2016年5月に、ロースクール時代の先輩弁護士2人と「あおば法律事務所」を設立しました。現在は、交通事故・借金問題・離婚問題等を多く扱っていて、最近特に力を入れているのは、消費者問題です。独立する前は担当した仕事をこなしていくという感じでしたが、独立後は自分で案件を決め、自分の責任ですべてやらなくてはならないので、とても大変です。

ただ、独立すると、事務所の看板ではなく私を頼って来ていただけるので、依頼者との距離感が近く、大きなやりがいを感じます。弁護士に相談しなくてはならないことが起こるのは、一生に一度あるかないかです。特に刑事事件はその方の人生を左右するものなので、より緊張感を持って取り組んでいます。人生の一大事に依頼を受ける以上、ひとつひとつの案件に真剣に取り組まなければならないと思っています。

―今後の夢や目標があれば、教えていただけますか?

私は、小学5年生の頃、家庭の事情で埼玉県から山梨県へ引っ越してきました。その辛い時期に温かく受け入れてくれた山梨に貢献したいという想いがあり、地元で仕事をすることを選びました。これからも、ひとつひとつの案件を大切にしながら依頼者との信頼関係を築き、どのような解決策がベストなのかを依頼者と一緒に考えていきたいと思っています。

中川佳治さん

また、自分自身もさらに経験を積んで、山梨県弁護士会の先生方が私に示してくれているように、次世代の弁護士の手本となるような弁護士になるのが目標です。私が司法修習生を受け入れられるようになったら、自分なりの弁護士像をきちんと伝えていければと思っています。

無限ではない自分の時間を、目標に向かってどう使うべきか

―奨学金の給付を受けていて、良かったことは何ですか?

ロースクールの掲示板に貼られていた赤尾育英奨学会のポスターを見て奨学金のことを知り、学校へ問い合わせをしました。学業に使えるお金がなくてアルバイトに励む学生もいましたが、アルバイトをすると勉強する時間が減ってしまいます。私は奨学金のおかげで、学業に専念する時間が確保でき、さらに参考書や試験対策の本を買うことができました。このことが司法試験の合格に繋がったと思っています。

―最後に、奨学金の利用を考えている学生の皆さんに、メッセージをお願いします

奨学金と同じ額のお金をアルバイトで稼ごうとすると何時間働かなければならないでしょうか。時間は無限ではないので、目標に向かって時間をどう使うべきか、逆算して考えていくことが大切です。私は、時間を確保するひとつの手段として、奨学金があるのではと思っています。奨学金があれば、自分の時間を自分の目標に向かって使うことができます。奨学金の利用を考えている皆さんには、ぜひ、時間の使い方を考えるきっかけにしてもらいたいです。

文/写真:真壁在

山梨県甲府市街